2011年10月初旬発売開始!
定価1,575円(本体1,500円)
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著者に聞く「家で死ぬことって、難しいですか?」 vol.1
現在、日本で亡くなる人の数は年間約120万人、そのうち8割以上が病院で亡くなる。自宅で最後まで過ごしたい、住み慣れた環境で必要以上の医療を受けることなく最期を迎えたい、と望む人の数は少なくないにもかかわらず、現実には最後の場所に自宅を選ぶことはなかなかハードルが高いようだ。
この度、保健同人社より『家で死ぬこと、考えたことありますか?』を上梓した訪問看護師の秋山正子さんは、地域で生活する高齢者や自宅での生活に助力を要するがん患者に適切な看護とケアを提供することで、最後まで自宅で過ごす生活を支え続けている。
東京都新宿区で、20年にわたって地域と向き合い、「人生の幕引きのお手伝い」を手がける秋山正子さんに話を聞いた。
さまざまな事情を抱えながら最後まで自宅で過ごすことを選ぶ
「ご本人も、そしてご家族も、また、関わる医療・介護のスタッフも、十分に力を発揮し、満足して見送れる。そして、亡くなった後も、別離の悲しみを持ちながらも、新しい人生を歩んでいけるグリーフケアにもつながる。そういった在宅での一連の経過を、多くの方にお伝えしたい思いで、事例をもとにした、この本の執筆が始まりました」
と語る秋山さん。
本書の特色の1つは、さまざまな事情を抱えながらできるだけ自宅での生活を選んだ人たちが、何組か登場することだ。重い持病を抱えていても、高齢で配偶者が寝たきりでも、1人暮しの人でも、その人らしい生活を保ちながら最後まで自宅で生きることを選んだ人たちを紹介しながら、同時に在宅で、さまざまな手段を組み合わせて「できること」がわかる。
例えば、がんの治療を経て頸椎を骨折していても寝たままでお風呂に入る、抗がん剤の副作用で紙のように薄くなってしまった肌をマッサージでケアする、介護を担う家族間の感情的なトラブルをどう乗り越えるか、等々現場からの生きた状況と対処が伝わってくる。
その人らしい、幕引きを支えることができてよかった
本書でも登場する30代の女性・Yさんは、乳がんの治療を経て、家族(姑・夫・小学生の息子)を遺して亡くなった。秋山さんには、日常を大切にしながら自宅での日々を重ねていた姿が印象に残っているという。
「ギリギリの時期まで、息子さんにもご家族にもごく普通に接していましたね。息子さんには『ちゃんと勉強して』など本当に当たり前のことしか言わなかった。若い担当看護師のほうが、何か子どもに伝えておかなくていいのか、家族に言い残すことはないのか、って心配していたくらい」
でもね、と秋山さんは続ける。終末期の患者さんにはどうしても周囲が悔いなく人生を終えさせてあげたい、と尽力する。いわば、ドラマティックにシナリオを考えてしまう。だが、そうした筋道を望まない人生だってもちろんあるはずだ。ありのままを、周囲が受け止めたらいい。それができるのは、自分の人生を最後まで送る自宅という場所の力ではないか、と。
Yさんは子どもと過ごした休日の翌日、「明日は学校に行きなさいね」と声をかけて、子どもが学校にいる間に亡くなった。
「彼女の中では、普通のお母さんとして、お子さんと日々接していたかったんだと思います。そういう希望を実現させられて本当によかったと思う」
「病院には戻らない」 強い意思を見せて亡くなった男性
また、重度の心筋炎を抱えたまま年末年始を自宅で過ごし、お正月が明けて亡くなった70代の男性・Sさんを看取ったときのことも、記憶に強く刻まれている。
「彼は、心臓が徐々に弱っていくという状態で循環器の病院に入院していたのですが、予後が悪くて主治医の薦めもあって自宅に帰りました。血圧や脈圧など、バイタルサインは良くなかったけれど、本人が自宅に居たい、と言い切っていましたね。『病院は寂しいから』、と」
もし、入院していたら、たくさんの医療機器に囲まれて、モニターに繋がれたまま検査値の数値をコントロールすることを最優先に「生かされて」いただろうと秋山さんは語る。
「彼の場合は、本当に自分の意思がはっきりしていて、病院では死にたくない、というのが明らかでした。病気の経過や予後についても、すべて医師から説明を受けていて、自分の状態もよく把握していました」
年末、自宅に帰った男性からのSOSで始まった在宅看護は、男性の旅立ちで終わりを迎えた。7日間という短い関わりだったが、本人の望む旅立ちを支えられたことは、家族にとっても十分な関わりができたという満足につながったそうだ。
食べ物や言葉に馴染みのある場所が「暮らし」を支える力

東京都新宿区・暮しの保健室にて。
本書では在宅の生活を充実させる生活ケアの方法にも注意を払う。介護を担うヘルパーやサービスを活用しながら、1日でも長く在宅での生活を続ける方法がきめ細かく紹介される。それでも、ここにあることが全てではない。
「在宅ケアは、本当に個別性があるものです。ご家族ごとに経験されることも違うし、感じられることも違うと思います。今、切実に介護を必要とされている方は、どうかお近くの在宅医療を担う医師や訪問看護師、ケアマネージャーとともにチームを組んでください。皆さんの状況に合った窓口にできるだけ早く辿りつけたらと祈っています」
- 秋山正子(あきやままさこ)
- 秋田県生まれ。1973年聖路加看護大学卒業。産婦人科病棟にて臨床経験を重ねた後、大阪・京都にて看護教育に従事。1990年に実姉を末期がんで看取った際に在宅ケアを経験したことから、訪問看護の世界に足を踏み入れる。
1992年より東京・新宿区で訪問看護事業に深く携わる。現在、(株)ケアーズ 白十字訪問看護ステーション・白十字ヘルパーステーション統括所長として現場を訪問する傍ら、新宿区の介護サービス事業者協議会や新宿区地域看護業務連絡会の委員を務める。また、大学の看護学部の非常勤講師として後進の育成にも携わっている。「30年後の医療の姿を考える会」会長、「NPO法人白十字在宅ボランティアの会」理事長。著書に『在宅ケアの不思議な力』『在宅ケアのつながる力』(医学書院)ほか。











